確かな技術力と環境意識の高さが実現する、
厚紙UV水なし印刷の技術をデザインの力で発信

デザイナー小玉文 × 株式会社エヌエーシー × IMPRIMA™

確かな技術力と環境意識の高さが実現する、厚紙UV水なし印刷の技術をデザインの力で発信

IMPRIMA™ Story 1リサーチ

「TORAY PRINTING PLATES Lab.」はTORAYの印刷プレートによる表現の可能性を探求し、新たなクリエーションにつなげるための実験的な取り組みです。第一線で活躍するクリエーターとパートナー企業がTORAYの印刷プレートを通して出会い、互いに刺激を与え合いながら1つのチームとしてゴールに辿り着くまでの軌跡を連載形式でお伝えします。

参加クリエーター：

小玉文

2013年に株式会社BULLETを設立。パッケージをはじめとして、枠にとらわれない幅広いジャンルのデザインを行う。特に紙器の造形において緻密かつ大胆な造形で他の追随を許さない、世界で受賞多数のデザイナー。おもな受賞歴に、グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞（金賞）、One Show (gold)、Pentawards (platinum)、Cannes Lions、D&AD (graphite)、Red Dot、iF Design Awardなどがある。東京造形大学助教。
パートナー企業：

株式会社エヌエーシー

静岡県三島市を拠点とする紙器をメインとする包装資材印刷会社。富士山を水源とする豊かな地下水を有する街で、環境に配慮した水なし印刷、厚紙UV印刷など品質にこだわった特殊加工のパッケージ印刷を提供し続けている。
印刷プレート：

IMPRIMA™（水なしオフセット印刷方式）

高精細な網点再現により高品質かつ印刷品質の管理がしやすく、絵柄の濃度安定性が高い印刷プレート。環境性能においてもCO₂排出量の削減が可能となりカーボンニュートラルの実現に貢献。VOC排出量も劇的に削減し、大気汚染対策に加えて製造現場の清潔化＝作業に携わる方々の健康にも寄与している。

約20年間、トライ＆エラーを繰り返しながら
高めた水なし印刷の技術でデザイナーの期待に応えたい

デザイナー小玉さん（以下小玉）：本日はお招きいただきありがとうございます。様々な印刷技術を試せるのはすごくありがたいことなので、とても楽しみにしていました。水なし印刷は初めての経験です。エヌエーシーさんはどのような経緯で水なし印刷を始められたんですか？

代表取締役野口さん（以下野口）：約20年前になりますかね、とある企業さんが出しているプリンター用インクジェットの個装箱を当社でやらせてほしいというお話をしたところ、その企業さんは環境対応にすごく力を入れていて。「水なし印刷はできますか？」というお話を頂いたのが始まりです。水なし印刷も正直それまでは知らなかったので早急に調べまして、ちょうど今の工場を新築移転する計画があり新しい印刷機を導入する予定だったのとタイミングが重なったんです。当時は包装紙などの薄紙しか印刷していなかったので、厚紙を使ったパッケージなどは初めてだったのですがスムーズに移行できたんですよね。

クリエイティブ事業部・生産本部社員の皆さん（以下 NAC社員）：導入当時から困りごとがあるとTORAYさんにすぐ相談していたんですが、技術部門の方が実際に来てくださったりとても丁寧に対応していただきました。

事例サンプルとして並ぶ紙器について質問する小玉さん

野口：最新の印刷機だったので、職人感覚というよりは各要素が数値化されていて。早い段階で安定感を感じましたね。印刷は温度が重要なので、季節に応じたデータ管理をしやすいのがありがたいです。

小玉：一度軌道に乗ってしまえばあとはスムーズなオペレーションが可能なんですね。そもそもの話になりますが、水なし印刷は技術的に難しいものなんですか？

NAC社員：水なし印刷は1％の網も飛ばずに鮮明に出るので、水あり印刷との違いに最初は手こずりましたね。逆に薄い網に関しては割とすんなり綺麗に出てくれました。水あり印刷だとどうしても最小点がなくなったりしてなかなか出にくかったのですが。

小玉：そんなに高精細なんですね！パッケージのデザインでは、ナチュラルな印象を表現するために、背景に薄いクリーム色を印刷することがしばしばあるのですが、微妙なパーセンテージの差で、想定していたよりもかなり濃い色になってしまうこともあるんです。

NAC社員：ほんのわずかなパーセンテージで大きく変わりますからね。校正の段階で機械で仕上がりを予測する必要があるので工夫しながらやっています。パッケージはリピート性があるものですが、水なし印刷だとリピートしても色がブレないので温度管理さえしておけば、ある程度同じ色でいけるという利点があります。こちらとしても、デザイナーさんがやりたいことを共有して、それが実現できた時が嬉しいので努力は惜しみません。

小玉：それはとても嬉しいお言葉です。それに色がブレないっていうのは本当にすごいですね。

世界的な動きとなったSDGsに対応した
印刷技術であることをアピールするためには何が必要なのか

代表取締役野口貴生さん

小玉：水なし印刷と特に相性が良い紙はありますか？

野口：比較的どの紙でも問題ないですね。そもそも当社は水なし印刷が1番難しいマイクロフルート（※）からスタートしたので最初に高いハードルを越えたというか。これに直接印刷するというのはなかなかできるところが少ない技術になります。

小玉：驚きの技術ですね。そういえば最近、某化粧品メーカーさんのパッケージにマイクロフルートが採用されたことが話題になりました。マイクロフルートはダンボールとしてリサイクルできますし、いろいろな企業さんがそういった視点を持ち始めているのを感じます。

野口：水なし印刷を始めた時に色々なところに売り込みにいったんですが、当時はどこも環境面よりは、コストを重視している企業様が多かったですね。ここ数年では、SDGsの認知度向上もあり、環境面での訴求には追い風が吹いているという様に感じています。

小玉：これからは水なし印刷が当たり前になっていくのではないでしょうか。

※マイクロフルート：ダンボールの中でも段の高さが1mmを下回るような超極薄タイプのもの

野口：SDGsが世界的な動きになっているので、問い合わせも増え始めましたし展示会に出しても反響が高いです。脱炭素の流れはますます加速していくと思いますので、とにかく案件を増やして認知度をあげていきたいと考えています。環境対応をしたパッケージ印刷を強みとしてどんどんアピールしていきたいですね。

小玉：環境への意識がとても高いのが素晴らしいです。お話を伺って、特にマイクロフルートへの直接印刷が魅力的に感じられたので、ぜひこれを活かしてものづくりがしてみたいと思いました。みなさんの技術が活きるものを作りたいですね。これまでにないマイクロフルートの使い方ができると営業ツールとしても使っていただけるかなと思うのですがいかがでしょうか？

NAC社員：化粧品や日用品用はほぼないので、そのあたりがあると展示会などでもお客様の反応が良いのではないかと思います。

小玉：マイクロフルートは日用品などを入れる緩衝材の役割も果たせますし、そういう箱はすぐにリサイクルに出すのでダンボールという利点が活かせそうです。

野口：食品包装は減プラはできても脱プラは難しいのですが、電子機器や日用品を入れる箱だと脱プラも可能なので環境性能につなげやすいかと。また営業的な立場で考えると、水なし印刷は良いものなんだけどちゃんと真の価値が伝わっていかないというか、そこを突破できるようなデザインに出会えたらと思います。

小玉：エヌエーシーさんの強みや魅力を引き出せるものを作りたいと思います。デザインのヒントをたくさん頂けて良かったです。本日はありがとうございました！