デザイン会社P.K.G.Tokyo × TORAY開発チーム × RESOLUCIA™
ビジネスチャンスを掴みうる、
フレキソ印刷の概念を変える高精細な仕上がり
デザイン会社P.K.G.Tokyo × TORAY開発チーム × RESOLUCIA™
ビジネスチャンスを掴みうる、フレキソ印刷の概念を変える高精細な仕上がり
RESOLUCIA™ Story 3本印刷
「TORAY PRINTING PLATES Lab.」はTORAYの印刷プレートによる表現の可能性を探求し、新たなクリエーションにつなげるための実験的な取り組みです。第一線で活躍するクリエーターとパートナー企業がTORAYの印刷プレートを通して出会い、互いに刺激を与え合いながら1つのチームとしてゴールに辿り着くまでの軌跡を連載形式でお伝えします。
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参加クリエーター:
P.K.G.Tokyo
2017年設立のデザインを強みとするブランドマネジメントエージェンシー。リサーチから戦略立案、商品開発、ウェブ企画まで、コーポレートからプロダクトおよびサービスにおけるブランディングを広く手掛けている。また、P.K.G.Labという活動を通して、企業とともにサステナブルな未来を学び、探求する試みを積極的に行っている。
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パートナー企業:
Comexi
主に軟包装用のフレキソ印刷機を扱う、スペインの印刷機メーカー。
印刷から最終工程の自動化まで、幅広い革新的なソリューションを提供している。また、EBインキメーカーとも提携し、EB印刷システムを推進している。 -
プロジェクトチーム:
TORAY開発チーム
東レ株式会社印写システム事業部に所属するフレキソ印刷方式用超高精細印刷版「RESOLUCIA™」プロジェクトチーム。 愛知県の東レ・岡崎工場を拠点に、フレキソ版プレートの常識を超えた高品質な製版・印刷による新しい価値の創造を通じて社会に貢献するため、印刷版の品質向上に取り組んでいる。
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印刷プレート:
RESOLUCIA™
フレキソ版プレートの常識を超えた高品質な製版・印刷を実現。東レの技術革新によって200線レベルの高精細に対応したことで再現性が向上しただけでなく、完全水現像により従来の溶剤現像方式と比べ製版時間が大幅に短縮され、高い生産効率も確保。
初回のテスト印刷を経て、
よりメリハリを出すために素材を変更
― 6月某日、つい先日梅雨入りしたとは思えないほどの暑さの中、表参道に構えられたP.K.G.TokyoのオフィスにはTORAY PRINTING PLATE Lab.チームが集結していた。その目的は、製版プレートRESOLUCIA™を使用し、スペインの印刷機メーカーであるComexiで本印刷を完了したパウチの仕上がりを評価する。―
P.K.G.Tokyoデザイナー天野さん(以下 天野):お暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。数回のテスト印刷を経て、とうとう本印刷にたどり着いたパウチの完成品がスペインから届きましたので、本日はみなさんと出来栄えについてお話できたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
P.K.G.Tokyoデザイナー長田さん(以下 長田):簡単に今までの過程を振り返らせていただくと、1回目の印刷では全体的に調子のメリハリがなく、色の彩度が落ちてしまったのが課題でした。続いて2回目の印刷ではフィルムを変更してメリハリが出たものの、目指すクオリティーとしてはあと1歩だったので、本印刷までに更なる改善を図ることになりました。
TORAY開発チーム(以下 TORAY):2回目の印刷では、特に「UMAMI JAPAN」の文字色についてご意見をいただきました。そこの部分は色インキの上に墨をのせるというフレキソ印刷における刷り順が影響しています。紙などのオフセット印刷はリッチブラックを作るとなったら墨の上に色をのせるのですが、フレキソ印刷では刷り順が逆なので墨がうまくのらなかったのだと思います。
フレキソ印刷で実現した文字のリッチブラック
天野:そうですね、出汁の素材ごとに「UMAMI JAPAN」の文字色を変えるため、CMYKのKに他の色を少しずつ混ぜているのですが、2回目の印刷では狙った色味にならなかった印象でした。今回の印刷では、どのような工夫がなされたのでしょうか?
TORAY:フレキソ印刷ではどうしても刷り順を変更することはできないので、本印刷の際にはデータそのものを長田さんに調整していただくことで改善を図りました。
長田:TORAYさんから、「データの色を少し落とすことで、色がつきつつも墨がもう少しのるようになる」とご提案いただきましたので、今回はデータ上で調節しています。
天野:なるほど。Kは100%のままでCMYの値を半減することで、Kがのりやすくなると。CMYがべったりと塗られているとKが入り込む隙間がないけれど、CMYの網点が間引かれたことでKが入りやすくなるようなイメージですね。
TORAY:そうですね、そのように捉えていただいて良いと思います。
天野:では早速、本印刷の仕上がりを見ていきましょう。まず話題に上がっていた「UMAMI JAPAN」の文字色はかなりイメージに近いものになりましたね。例えば椎茸だったらC15+M0+Y15+K100なのでオレンジがかった墨で、帆立はC0+M30+Y0+K100なので紫がかった墨になっていますが、狙い通りの色になりました。
TORAY:デザイナーさんのご要望に応えられてよかったです。
天野:紙などのオフセット印刷だとリッチブラック・濃厚な黒を出す手法は当たり前に使えますが、それがフレキソ印刷で実現するのかが今回はチャレンジでした。テスト印刷を経て、今回はまさにリッチブラックだなと思っています。フレキソ印刷でリッチブラックは再現できる、コントロールできるという事例を作れました。例えばデザイナーから「やや青みのあるリッチブラックにしたい」みたいなオーダーがあった時に、「フレキソ印刷だとCMYを何%くらい入れたらイメージ通りできます」と対応することができますね。
「乾物の色味を絶妙に再現する」という
ハードルの高いチャレンジ
天野:続いて写真の部分ですが、全体的に見てメリハリが出ましたね。しっかりと色味がのっていて鮮やかに見えています。出汁の素となる素材は茶色っぽいものが多いのですが、色をしっかりと引き立てて出せてるなと思ってます。補正をしたことによって調子の幅が増えているようで濃いところは濃く、赤いところは赤くという調整がプラスに働いたと感じました。
長田:鰹や小海老など赤味があるものが特に良いですね。対していりこは黒い影の部分が多いからか、パっと見た時の印象が濃くなりすぎたかもしれません。
天野:中間調子がなくなってしまいましたね。個別に画像を調整していけばそういうところも改善できると思いますが。
TORAY:今回は色調の違う写真を一律でデータ補正しているので、適正なものとそうでないものが混在してしまった、というところでしょうか。
天野:なるほど、そういうことなんですね。個人的には椎茸も良いなと思います。よりリアルな感じになったと言いますか、墨の効果が出ましたね。前回はちょっと墨が浅い感じがしましたが、本印刷の椎茸の色は「まさに椎茸」という感じです。
長田:昆布は彩度が上がりすぎてしまいましたね。他の素材は彩度を上げることによって魅力も上がりましたが、昆布は彩度を上げると生っぽさが出てしまうと感じました。
天野:全体的に色味が茶色の乾物を絶妙に再現するのはなかなかハードルが高いものでした。難しいものに挑む、というのが今回のTORAYさんとのチャレンジだったのですが良い挑戦になったなと思います。
TORAY:そうですね、なかなか難しい画像でした。そもそも食品パッケージは色鮮やかなものが多いので…。そういう意味では今回印刷を担って下さったComexiさんからも、国や文化が違うというのもあるのですが「何の食べ物か分からないものが多いけれど写真がきれいに刷れたね」とお声かけいただきました。
よりメリハリが出た写真部分
RESOLUCIA™のポテンシャルを
発信する魅力的な印刷サンプルが作れた
天野:私自身はフレキソ印刷で写真を高精細に…という経験がないのですが、事例として多いものですか?
TORAY:高精細なものがあまりないので、実際には少ないと思います。そういった部分で言うと、TORAYの版の売りである「フレキソ印刷なのに精細度が高い」というところで、初めて出てくるものかと思いますね。
天野:なかなか聞かないですよね。そういう意味では今回のチャレンジでは印刷サンプルとしてすごく参考になるものができました。
TORAY:今年の9月にスペインのバルセロナで世界的な包装やラベル関係の展示会が開催されるのですが、TORAYもブースを出す予定です。そこでこちらの完成品もアピールしたいなと考えています。
天野:そうなのですね。スペイン、行こうかなぁ(笑)日本でも、どんどんフレキソ印刷を広めていきたいですね。
TORAY:現在日本をはじめアジアでは軟包装はフレキソ印刷よりもグラビア印刷がメインですが、今後サステナブルの観点からフレキソ印刷が取り上げられることも増えていくかと思います。
天野:1歩1歩積み重ねていくことで、フレキソ印刷の価値が10年後には日本でも変わっているかもしれないですね。この作品で我々デザイナーの要望を叶えていただいたおかげで、RESOLUCIA™は高いレベルの印刷が出来ますと発信するサンプルを作れました。日本国内、そしてアジアに市場を広げていく時には、フレキソ印刷の技術は必ず必要になってくると思うので、それを今回のチャレンジで体験できたのはデザイナーとしても価値があると思っています。
文字や罫線も綺麗に刷れている
色トーンも微細に表現
総括:フレキソ印刷でしか出来ないことが増えていけば、
大きなビジネスチャンスに繋がる
天野:今回の企画で、TORAYさんの優れた版であるRESOLUCIA™が普及していけば、フレキソ印刷の概念が変わっていくんじゃないか、世の中に普及するのではないかと可能性を感じました。また、フレキソ印刷の役割が日本の市場と世界の市場では全く違うのだと知ることができたのは面白かったですね。日本市場だと、例えば量やスピードがそこまで求められてなかったのだと思いますが、ヨーロッパの市場だとかなりシビアですよね。市場も巨大ですし、そういったところから技術が進化していったのだと感じました。その結果として、こういった高精細なフレキソ印刷ができているということに触れられたことは、自分の印刷に対する意識を日本市場からグローバル市場に変えるきっかけになったと思います。
長田:パウチの裏面の文字は紙の印刷でも小さいと感じるものまで試してるのですが、細部まで繊細に刷れていますし、罫線とかもすごくにきれいに出ていて。カラーチャートの色のジャンプアップなど細かいところもイメージ通りなので、本当にフレキソ印刷なのかと感じてしまうほど高い精度になっていました。また、写真の再現もここまで出来るのかと驚きました。グラビア印刷と遜色なく、写真で価値を伝えるパッケージにも挑戦できるのではないかと思います。
TORAY:軟包装へのフレキソ印刷で写真をここまで高精細に表現できたこと、デザイナーのご要望に対応できたことは自信に繋がりました。展示会などで外に出した時に、お客様からどのような評価が返ってくるか、どのように使いたいと思っていただけるかが楽しみです。また、事業の観点から言うと今後のモノマテリアル化の方向の中で、TORAYでもフレキソ印刷の技術にとても注目しております。将来的にフレキソ印刷でしか出来ないことが増えていけば、大きなビジネスチャンスに繋がるのではないでしょうか。